不動産(マイホーム)の買換え特例とは税金対策に役立つ特例のことです。マイホームを買い換えようと考えている方にとって税金対策は大切なポイントとなります。なぜなら、大きな買い物の場合には、それに伴って税金も高額になるからです。

不動産を売って利益を得た場合には、その約20%(あるいは約40%)が税金として徴収されます。このときの税金は、100円200円の買い物と違って、破格の値段となります。例えば、1,000万円の利益が出たときには、約200万円(あるいは約400万円)が税金として徴収されるのです。このように不動産の売買で利益が出た際に、それにかかる税金を免除・軽減するといった特例がいくつかあります。

その中の1つに、不動産(マイホーム)の買換え特例があります。ここでは、この不動産(マイホーム)の買換え特例について、その概要や使う条件、使う方法など、詳しく説明していきます。マイホームを買い換えようと考えている方は、これを参考に後悔のない買換えを目指しましょう。

不動産(マイホーム)の買換え特例とは

不動産(マイホーム)の買換え特例とは、不動産を売ったときに発生する税金を将来に繰り延べる制度のことです。正式には「特定の居住用財産の買換え特例」と言います。

マイホームを買い換える場合には、マイホームを売って、異なる物件を買うということになります。冒頭でもお伝えしたように、税金対策をしなければ、マイホームを売る際には多くの税金を支払うことになってしまいます。そこで役に立つのがこの特例です。本来かかる予定だった税金を、今回買い換えた物件を売るときまで延期することができるのです。

例えば、1,000万円の不動産が4,000万円で売却できたとします。新しく5,000万円の物件に買い換えて、この物件が将来7,000万円で売れた場合を考えてみましょう。最初にマイホームを売ったときには、3,000万円の利益となりました。しかし、特例によって税金を繰り延べると、このときには税金がかかりません。5,000万円で買った新しい物件が7,000万円で売れたときには、2,000万円の利益が出ます。ここで課税対象になるのは、利益となった2,000万円だけでなく、前回繰り延べた3,000万円も課税対象となるのです。つまり、ここでは5,000万円が課税対象となるのです。

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条件さえ満たせば次に買い換えるときにも、この特例を利用できます。

売却価格よりも安い物件に買い換えた場合にはどうなる?

先ほどの例は、売却価格よりも高い物件へと買い換えたことを前提としています。それでは、売却価格よりも安い物件へと買い換えた場合には、どうなるのか見ていきましょう。

高い値段で売って安いものを買い換えた場合には、その分だけ利益が出ます。簡単に言うと、この得をした分(利益)に税金がかかるのです。ただし、お金もうけした分が課税対象となるので、この利益から、必要経費となる「不動産の取得費(不動産の価値など)と譲渡費用(仲介手数料など)」を差し引くことができます。

①実際の利益
売却価格-買い換えた金額

②必要経費
(売却したマイホームの取得費と譲渡費用)×(①÷売却価格)

③譲渡所得(課税対象となる金額)
①-②

②の計算の計算が少し複雑に感じるかもしれませんので、少し補足をします。売却価格を使って新しいマイホームを買っているので、売却価格のすべてが利益として手元に残っているわけではありません。課税対象とならない必要経費(「取得費と譲渡費用」)についても、「全体の利益に対して、実際に利益として残った割合」と同じ割合で計算する必要があるのです。

例えば、1,000万円の不動産が4,000万円で売却でき、新しく2,000万円の物件に買い換えるとします。譲渡費用を200万円として、この場合の課税対象を見ていきましょう。

①実際の利益
売却価格4,000万円-買い換えた金額2,000万円
=2,000万円

②必要経費
(売却したマイホームの取得費1,000万円と譲渡費用200万円)×(①2,000万円÷売却金額4,000万円)
=600万円

③譲渡所得(課税対象となる金額)
①2,000万円-②600万円
=1,400万円

③譲渡所得の1,400万円に税金がかかることになるのです。

不動産(マイホーム)の買換え特例を利用するための条件

この特例を使うにはいくつかの条件があります。「売却したマイホーム」、「買い換えたマイホーム」という2つの観点から特例を使う条件を見ていきましょう。

売却したマイホームの条件

  • 自分が住んでいる家屋、もしくは住まなくなってから3年以内(住まなくなった日から3年目の12月31日まで)の家屋
  • 国内にある家屋
  • 売却価格が1億円以下のもの
    ※分割して売る場合には、マイホームの売却年から前後2年、合計5年以内での売却価格が1億円以下であること
  • 敷地や家屋の所有期間が売却した年の1月1日に10年を超えるもの
  • 居住期間が通算して10年を超えるもの
  • 平成31年12月31日までに売却したもの(期限が延長されました)
  • 親子や親戚、内縁関係にある方、特殊な関係のある法人などに対する売却でないこと
  • 売却した年の前年と前々年に3,000万円の特別控除やマイホームを売ったときの軽減税率の特例、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰り越し控除の特例を使っていないこと
  • すでに家屋を取り壊している場合には3つの条件があります。

    1. 家屋を取り壊した年の1月1日に所有期間が10年を超えていること
    2. 取り壊し日から1年以内に敷地の売買契約を締結し、住まなくなってから3年以内(住まなくなった日から3年目の12月31日まで)に売ること
    3. 取り壊してから契約の日までに敷地を貸駐車場などに使っていないこと

買い換えるマイホームの条件

  • マイホーム売却の前年1月1日~売却翌年1月1日までの3年の間に買い換えること
  • 売却翌年の12月31日までに買い換えたマイホームに居住すること
    ※売却の翌年にマイホームを買い換えた場合には、売却の翌々年の12月31日まで
  • 土地面積が500平方メートル以下
  • 建物の床面積が50平方メートル以上
  • 買い換えるマイホームが耐火建築物の中古住宅の場合には築25年以内

不動産(マイホーム)の買換え特例を利用するための方法

この特例を利用するには、以下の書類を添えて確定申告をすればよいのです。以下の書類では、先ほどの、特例を利用するための条件を満たしていることを証明するというわけです。

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  • 売却した資産が①から④のうちのいずれかであるということを記載した書類

    1. 通算10年以上居住し、国内にある家屋
    2. ①を満たし、住まなくなってから3年以内(住まなくなった日から3年目の12月31日まで)のもの
    3. ①か②のどちらかを満たした家屋と敷地や借地権
    4. 災害で家屋が滅失した場合、引き続き家屋を所有していると仮定して、売却した年の1月1日に所有期間が10年を超える家屋の敷地や借地権
  • 登記事項証明書と売買契約書の写し(①から④を証明するもの)

    1. 所有期間が10年を超えること
    2. 不動産を取得したこと
    3. 買い換えたマイホームの面積を証明するもの
    4. 売却価格が1億円以下であること
  • 買い換えるマイホームが耐火建築物の中古住宅の場合には、築25年以内であることを証明するもの、もしくは耐震基準適合証明書

その他、状況によっては別途書類を求められることもありますが、基本的には以上のものが必要です。


ここまで不動産(マイホーム)の買換え特例の概要、使う条件、使う方法について詳しく説明してきました。なお、この特例を利用する場合には、他の特例や住宅ローン控除との併用できません。どれを利用すればよいのかよく調べて慎重に選んでください。

不動産(マイホーム)の買換え特例の利用におすすめなのは、売却価格が3,000万円以上で、買い換えるマイホームが売却価格以上の方です。しかしながら、状況に応じて他の特例を使うほうがよいという場合もありますので、自分の状況に応じて選ぶ必要があります。

出典:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」
   国税庁「売った金額より少ない金額でマイホームを買い換えたとき」

 

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