一生にそう何度とない不動産の購入。大きな買い物のために、その分どの不動産にするか悩んでしまうでしょう。「やっぱりこっちの不動産がよいから契約を取りやめたい」という方もいらっしゃいます。あるいは、一時的な感情で即決して購入してしまうこともあるでしょう。その場合には、「後になって考えると自分の思っていた条件と違うから契約を取りやめたい」と考えている方もいると思います。どちらの場合にも「不動産の売買にもクーリングオフがあるの?」という疑問をお持ちのことでしょう。単刀直入に言いますと、不動産にもクーリングオフはあります。ただし、それにはいくつかの条件があるので注意が必要です。不動産の売買でクーリングオフを考えている方のために、ここでは不動産のクーリングオフについて、その概要や使う条件、使う方法など、詳しく説明していきます。
 

また、クーリングオフを考えている方だけでなく、これから不動産を買おうと思っている方にとっても有益な情報になるはずです。クーリングオフの制度をあらかじめ知っておけば、安心して不動産を買うことができるでしょう。自分の意に沿わない不動産を買ってしまった方も、これから不動産を買おうと思っている方も、これを参考に後悔のない不動産契約を目指しましょう。

 

 

そもそもクーリングオフとは

クーリングオフについては知っている方も多いと思いますが、改めて確認しておきましょう。
クーリングオフというのは、訪問販売など不利な状況で申込み(契約)した場合に、一定期間内であれば一方的に契約を解除できる制度のことです。クーリングオフをした場合には、売主は損害賠償や違約金を請求できませんし、手付金などの返還が義務づけられています。そのため、「損をしたくないから仕方なしに買う」といった泣き寝入りのような契約を防ぐことができます。つまり、クーリングオフは消費者を守る制度なのです。

不動産にもクーリングオフがある

冒頭でもお伝えしましたが、不動産の売買にもクーリングオフ制度はあります。これは宅建業法(宅地建物取引業法)の第37条の2で定められているので、法的拘束力を持っています。しかしながら、クーリングオフ制度というのは基本的に消費者を悪徳業者との契約から消費者を守るためのものですので、すべての取引で契約解除できるというわけではないのです。
さて、契約を解除したいと考えている取引が、クーリングオフ制度を使えるかどうか気になっているのではないでしょうか。次に、クーリングオフが使える条件を見ていきましょう。

不動産の申込み(契約)でクーリングオフを使う条件

クーリングオフを使うには、大きく分けて5つの条件があります。

  1. クーリングオフの説明を受けてから8日以内
  2. 売主が宅建業者(宅地建物取引業者)
  3. 買主が宅建業者以外
  4. 事務所等以外の場所での申込み
  5. 引渡しを受けていない、あるいは代金全額を払っていない

それぞれについて以下に詳しく説明していきます。

 

条件1、クーリングオフの説明を受けてから8日以内

まずは「期間」についての条件を見ていきましょう。クーリングオフの説明を受けた日を1日目として、そこから8日以内というのが条件の1つです。クーリングオフ制度の使い方は後に説明しますが、クーリングオフ制度を使う旨を書いた書類を郵便で送る必要があります。この場合、クーリングオフ制度の説明から8日以内に発送すれば、相手方に届くのが8日を超えていても問題ありません。

ちなみにクーリングオフの告知に関しては義務ではありませんので、ごく稀に告知されないこともあります。その場合には、決済・引渡しが行われるまでの間はクーリングオフが可能です。

 

条件2、売主が宅建業者(宅地建物取引業者)

クーリングオフは、知識のある宅建業者が買主に不利になるように契約するのを避けるための制度です。そのため、売主が宅建業者である必要があります。売主が法人か個人かについての決まりはありません。つまり、売主が不動産会社であれば、大きな会社であっても個人経営であってもクーリングオフが適用できるということです。

 

条件3、買主が宅建業者以外

条件の3つ目は、買主が宅建業者以外であることです。これは「クーリングオフは一般消費者を守る制度のため、不動産会社間の契約には適用できません」ということです。

 

条件4、事務所等以外の場所での申込み

「申込みの場所」についての条件は少し難しいので、細かく説明していきます。
まず、注意すべきなのが「申込み」と「契約締結」についてです。申込みと契約締結は同時に行われる場合も多くありますが、別々の日・別々の場所で行われることもあります。クーリングオフを適用できるかどうかのポイントは「申込み」が行われる場所です。それが、売主の事務所等以外なら、クーリングオフを適用できます。つまり、事務所等で申込みをした場合には、どこで契約締結をしようとクーリングオフ制度は使えないということです。

事務所「等」というのは、すごく曖昧だと感じる方もいるでしょう。どこが「事務所等」に入って、どこが入らないのか見ていきます。
事務所等とは、不動産会社の事務所や店舗、営業所、住宅展示場など継続的に業務を行える施設のある場所のことです。それ以外の、買主の自宅や勤務先、喫茶店などで申込みをした場合にはクーリングオフを適用できます。
確かに冷静に考えると、喫茶店で申込みをさせるのはいかにも怪しいですよね。こうした怪しい契約に対してクーリングオフを使えるというわけです。

ただし、ここには2つの注意点があります。1つ目が、買主の要望により、自宅、あるいは勤務先で申込みをした場合には、クーリングオフが適用されないということです。「忙しくて時間を作れない」、「早く申込みをしたい」といった買主の様々な理由から、不動産会社に足を運んでもらう場合にはクーリングオフができません。なお、買主の要望であっても自宅・勤務先以外の、喫茶店やファミリーレストランなどでの申込みについてはクーリングオフが使えます。注意点の2つ目が、住宅展示場での申込みについてです。たとえ、住宅展示場で申し込んだとしても、テントや仮設小屋での申込みの場合には、クーリングオフが適用できます。

cooling-off

 

条件5、引渡しを受けていない、あるいは代金全額を払っていない

最後の条件が、引渡しと代金に関するものです。不動産の引渡しを受け、かつ、代金を全額支払ったときはクーリングオフができません。つまり、以下の場合にクーリングオフが適用できます。

  • (代金を支払ったが)引渡しを受けていない
  • 引渡しを受けたが、代金を全額支払っていない

クーリングオフ制度を使う方法

ここまでクーリングオフ制度の概要と、使う条件について説明してきました。それでは実際に制度を使うには、どのようなことをしたらよいのか説明していきます。クーリングオフ制度を使うには、売主に対して書面で通知する必要があります。普通郵便でも可能ではありますが、売主側に通知を受けていないと主張されてしまうこともあるので、どういう内容の文書をいつ受け取ったかということを証明してくれる「内容証明郵便」を使いましょう。

内容証明郵便とは

内容証明とは、「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたか」ということ証明してくれるもので、郵便局で依頼できます。内容証明郵便には3つのポイントがあります。以下に見ていきましょう。

  1. 差出郵便局
    すべての郵便局で内容証明郵便を差し出すことができるわけではありません。あらかじめ利用を考えている郵便局に問い合わせてください。なお、インターネットでも内容証明郵便を発送できます。
  2. 必要な持ち物
    以下の4つが必要な持ち物です。

    • 内容文書
    • 文書の謄本(書き写したりコピーしたりしたもの)2通
      →差出人と郵便局で保管
    • 差出人と受取人の住所氏名を書いた封筒
    • 郵便料金(内容証明の加算料金は430円)
  3. 謄本作成のルール
    謄本を作成する際には、例えば以下のようなルールがあります。

    • 字数と行数の制限
      →(縦書きの場合)
      1行20字以内で1枚26行以内
      →(横書きの場合)
      1行20字以内で1枚26行以内、
      1行13字以内で1枚40行以内、
      1行26字以内で1枚20行以内
    • 記号は原則1個1字
    • 謄本が2枚以上の場合には、つづり目に契印
    • 謄本への差出人と受取人の住所氏名の記載

参考:日本郵政株式会社「内容証明 ご利用の条件等」
参考:日本郵政株式会社「e内容証明(電子内容証明サービス)」

クーリングオフの際に通知する書面の内容

前述のとおり、クーリングオフを使う際には書面を用意する必要があります。しかし、どのように書いたらよいかわからないという方がほとんどではないでしょうか。そこで、文例を1つ紹介します。クーリングオフを考えている方は、以下の文例を参考にしてみてください。

契約解除通知書


以上、不動産のクーリングオフについて、その概要、使う条件、使う方法など詳しく説明してきました。クーリングオフ制度の利用を考え方で、クーリングオフできるかどうか、わからない場合にはお近くの消費生活センター等に相談してみるとよいでしょう。

 

不動産売買に関するご不明点等ありましたら弊社までお気軽にお問い合わせください。専門のスタッフが丁寧にご対応いたします。

 

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